第1期生による”リアルトーク”

当協議会運営の『みかん農家育成トレーニングファーム』
第2期生の応募を検討されている方の中には
「異業種からでも大丈夫?」
「良いことばかり書いてあるが、本当はどうなの?」
など様々な、疑問や心配があるかと思います。

そこで今回は、第1期生のお二人をむかえ、
「応募前に考えていたこと」
「研修生になってから感じたこと」を、
NGワードなしで赤裸々に語っていただきたいと思います!



INTERVIEWEE

百田さん(30代)

熊本県出身。前職はエンジニアでバッテリーなどの設計を
行う。ものづくりに魅力を感じ、独立を希望する中で、
「分析や綿密な計画による農作物の改良、作業の効率化を
自らの手で行える農家」にたどりつき、研修生に応募する。

本田さん(30代)

長崎県南島原市出身。前職は就労支援の事業所で職業指導員を担当する。業務で行っていた農作業において、苦労して育てた作物を収穫することに大きなやりがいを感じ、農家になることを決める。ファミリーと共にUターン、研修を行う。

[インタビュー日 2023/05/19]

Real Talk #1

01 1週間どんな研修を行なっていますか?

百田
みかんの作業がある時期は、みかん農家さんのもとで一緒に作業しながら学びます作業がない時は主に座学でみかん栽培に関する知識を学びます。そして、週に一度、この施設(有家蒲河地区高齢者研修センター)で、1週間の振り返りを行なっています。

すでにフィールドワークでは、20以上のみかん農家さんのもとで学び、とても参考になっています。

02 農家さんによって、栽培方法が違ったりしませんか?

本田
そうですね、それぞれの農家さんでやり方も少しずつ違いますが、各農家さんが共通して教えてくれる内容は「絶対に外せないこと」だとわかるので、とても勉強になります。
百田
また、正しい栽培方法が一つあるのではなく、圃場によって日当たりや土地の性質が変わるので、「その圃場を見極めて栽培方法を考えないといけない」という、良い気づきになりました。

03 指導が厳しい農家さんもいるんじゃないですか?

本田
山間部の急斜面で肉体的にキツい圃場はありますが、農家さんはみなさん、とても親切に教えてくれます。
百田
農家さんの年代もそれぞれで、休憩もしっかりとりながら作業される農家さんもいれば、バリバリと作業をされる農家さんもいるように、私たちの作業に求められるレベルが高い農家さんも実際にはおられます。

04 きちんと休まれていますか?

本田
市役所と同じく、土・日・祝日がお休みです。
百田
一般的な農業研修は「ひとつの農家さんに弟子入りする」形なので、農家さんの休みに合わせることになります。つまり、雨が降れば休みなど、休日が不規則になることがあります。

ここの研修生になる前、別のところで農家さんにお世話になったことがあるのですが、そこでは早朝からの作業が2週間休みなしで続きました(笑)

今は、基本9〜17時が研修時間となります。

05 どこに住んでいますか?

本田
出身が南島原市なので(Uターン)、祖父の家を改修して住んでいます。
百田
南有馬町のアパートに住んでいます。生活するには不便はありませんが、人があまり多くないのでよその町と比べるとお店の数は少ないです。ただコンビニが近いのとみかん農家さんが多い地域なので、研修するには便利ではあります。

06 7ヶ月経って「よかったと思う事」「心配だと事」は?

百田
良かったと思う事は、たくさんのみかん農家さんと実際に繋がることができ、また、みかん農家さんから経営などのリアルな意見を聞ける事です。

ひとつの農家さんだけでは、その方の主観である可能性もありますが、色々な人から情報を収集できる事は、とても良い環境だと思います。

百田
心配な事は、二人とも今まで非農家だったので、肉体的にキツいというのはなんとなく想像していたのですが、これから夏本番を迎え、体力が持つか心配です。
本田
良かったと思うことは、南島原果樹フロンティア協議会が「果樹を扱う4つの農業団体」「島原農業高校」「南島原市」「長崎県振興局」で構成されているため、様々な角度からサポートを受けられることです。
本田
心配な事というか、一番気になっている事は、今後、営農していく上で必要な、「収入の確保」と「圃場の確保」です。

圃場に関しては1件候補があるのですが、果樹の難しいところは「みかんを植えてから実がなるまで、最低5年かかるところ」と「事業の引き継ぎのタイミング」。

ゼロベースで始める場合だと、5年間その圃場でのまとまった収入が得られません
また、引き継ぎ先(譲り受ける)を探す場合には、大きな圃場だと「まだ10年は自分たちでする」というスタンスの農家さんが多いですし、引き継ぎを考えられている農家さんでは、既に圃場を縮小されているケースが多く、それだけではやっていけない可能性があります。

07 改めて知った、みかんの「栽培」の大変さは?

百田
みかんの営農で大切なことは「日々の積み重ねに加えて一年毎の積み重ね」だと学びました。そのため、初期段階で上手くいかなかった場合には、大きな痛手となる可能性があります。
本田
一年に1回しか収穫が無いですからね。

肥料も、前年ではなく、一昨年の内容で、実のつき方に大きく影響を及ぼすなど、ロングスパンの考え方が必要になってきます。

百田
そうですね。その年に枝が生えても、すぐに実がなるわけではないので、「来年どのように実を成らせるか」ということを考えて、手入れをしなければいけません。

08 研修生になってわかった「南島原市での生活」の大変さは?

百田
大型ホームセンターやニトリなどは、諫早まで出ないと無いことですかね。
若い人にとっては遊ぶところがないと思われるかもしれません。ただ、マリンスポーツや釣りが好きな人にとっては、とても良い場所です。それと、自家用車はあった方が便利だと思いました。
本田
あと、飲みに行った時、その時間には公共交通機関がないので「代行」で帰らなければいけません。

09 (踏み込んだ質問ですが)「今の経済面」はどうですか?

百田
バイトも始めないといけないな、と思っています。
本田
土・日や研修終了後の時間は、バイトをして良いことになっています。
現在、年間150万円(月12.5万円)の国からの農業研修生の補助をもらっていますが、物価や電気代なども上がっているので、なかなか大変なところはあります。
百田
その補助も半年後の後払いになるため、引越し費用や住宅の契約金、家具や半年分の生活費などの出費を考えると、ある程度の貯金はあったほうが良いかと思います。

10 未来の研修生に向けて一言

百田
繰り返しになりますが、これほどたくさんのみかん農家さんや農業団体、教育機関や行政と繋がり、話しあえる農業研修制度は他にはありません。マイナス面もお話ししましたが、本気で「これから農業を志す方」にとっては、逆に、栽培技術や営農について集中して学べる良い環境になるかと思います。
本田
第1期生の私たちだからこそ、色々とみなさんにお伝えできることもあるかと思います。また、研修生同士が、共に刺激し合いながら成長し、相談や雑談もできる良い関係性を作ればと思っています。

[インタビュー日 2024/01/19]

Real Talk #2

01 南島原のトレーニングファームを選んだ経緯は?

百田
農業をしようと考えていましたが、最初はどの作物を作るか決まっていませんでした。そんなとき、福島県で移住者募集のイベントがあり、りんご・小松菜を生産している農家さんに、直接お話を聞く機会がありました。その経験により、果樹に興味を持つようになりました

熊本に戻り、地元でも作れる果樹を調べたときに「みかん」が良いと思いました。熊本県の新規就農者募集のイベントでは「収入の高いアスパラガス」を紹介され、農家さんも訪ねましたが、業務量や拘束時間の長さに、自分には合わないと思いました。

その後も「九州」「みかん」というキーワードで色々と情報を調べていたところ、このトレーニングファームが目に留まり、研修内容を見てみると、いち農家さんに弟子入りという形で学ぶのではなく、「たくさんの農家さんや農業団体から、みかん作りを学べる」とありました。

農業において生産効率を上げることが目標の一つなので、いち農家さんのやり方ではなく、複数の農家さんのやり方を知れるのは、自分にとても合っているなと、魅力を感じたことがきっかけです。

本田
農業をしたいと思っていましたが、どのような手順を踏めば良いか、全く分かりませんでした。そこで、長崎県新規就農相談センターに相談をしました。そこでまずはじめに言われたことは「農業はそんなに簡単ではない。新規就農者の多くの人は、すぐにやめている」ということでした(笑)

その担当の方は親身に相談を聞いてくださり、公的な新規就農支援制度が厳しくなったことや、主な品目で新しく農業を始めた場合の農業経営試算について教えていただきました。ただそのとき感じたことは、2ヶ月の基礎研修と10ヶ月の実践研修という一年の研修だけでは、売り先もわからないし、研修終了後すぐに営農を始めることができるのかという不安が少しありました。

そんなこともあり、一旦は保留になっていたのですが、このトレーニングファームがオープンするときに、おすすめニュースで農業研修生募集の記事が表示されました。内容を見ると、2年間の充実した研修、複数の農家さんや農業組合との実地研修、そして安心感がある市の事業だということを知り、応募しようと思ったのがきっかけです。

02 15ヶ月が経ち、各農家さんや団体の印象は変わりましたか?

百田
農業組合や農家さんに関しては、JAS有機や特別栽培農産物を取り扱われている団体や、関西のスーパーをメインに出荷されている団体、農協に出荷している農家さんなどそれぞれ特色があり、自身の営農方針を決める上で、とても参考になりました。
本田
百田さんが言われた通り、本当にバラエティが豊かです。元証券マンや船員さんだった人もおられます。そういった色々な経歴を持った人からお話が聞けることは、とても参考になりました。あと、概して果樹農家さんは優しい人がとても多いです。

03 所属する団体や引き継ぎ予定の農地について

百田
南高果樹農協に所属することになり、2023年10月に、来年から引き継ぐ予定の農地が決まりました。広さは約1町3反です。
本田
株式会社 長有研です。2023年7月に引き継ぐ予定の農地が決まりました。段階的に引き継いでいくのですが、広さは最終的に約2町ほどになります。

現所有者の農家さんと、周りの畑を所有する農家さんとの間に信頼関係があるので、同じ団体に所属し、引き継ぐ予定の私が作業をしていても、その方達とのコミニケーションはスムーズです。水を利用させてもらっている農家さんも私のことを気にかけていただき、話しかけてくれます。これが、「全く知らない人が急に農業を隣で始めた」という状況だったら、関係性は全然違ってきたと思います。

04 研修生に向いている資質や必要な資格は?

百田
みかんの収穫は、一日中 同じ作業を行い、それが数ヶ月続きます。そういった地道な作業を、手を抜かず行える「忍耐力」が必要だと思います。これは、みかんに限ったことではありませんが。

あとは「自主性」です。研修後には自分たちで計画を立て、行動していかなければなりません。教えてくれる人も少なくなります。日頃から、研修で学んだことをベースに、“就農したら自分はどのようにするか” を意識しながら、常に考える必要があります。

最後に「コミニケーション能力」です。農家だからといって、一人で作業できれば良いということではないです。いろんな繋がりが必要になってくる。最初から個人で販売網を作ることは難しいし、組合に入り、みかんの作り方や売り方などを勉強しなければいけません。行政との調整も必要となってきます。

本田
あとマニュアルの自動車運転免許は必要です。オートマの軽トラックで働かれている農家さんは一人もいなかったです。

農作業に必要な「クローラー運搬車」や「草刈機」は使っていくなかで覚えますが、教えてもらったり、作業を手伝ってもらったりするときに、先ほど挙がった「コミニケーション能力」はとても重要だと思います。

05 今はどのような研修を行なっていますか?

百田
引き継ぎ予定の農地で、農家さんと一緒に作業をしています。メインは「収穫」、そして草刈りなどの「園地整備」、そのほかには「農道や倉庫の補修」を行なっています。
本田
同じく引き継ぎ予定の農地で「収穫」、その後「消毒」「肥料まき」「圃場整備」などを行なっています。

来年から引き継ぐことが決まっている農地なので、1年目の実習とは、意識が大きく違います。今までは「こういう風にするんだよ」という知識を得る研修でしたが、今は来年からは自分がどのようにしようかと考え、農家さんに相談しながら行うので、学ぶ点も大きく変わっています。

また、2年目に入ってからは、月に一度ぐらいのペースで指導員・市・県の関係者と研修所に集まり、農家になるための知識や制度を学び、協議するミーティングも行なっています。そして、デパートなど店頭で直接エンドユーザーにみかんを販売するという研修も行いました。

百田
前職ではBtoBで、求められた商品を提供する仕事でしたが、販売研修では、「直接エンドユーザー」に「できた商品」を売るという新しい体験だったので、貴重な経験となりました。

06 今後の展望は?

百田
みかんは植えてから収穫できるようになるまで5年ぐらいかかるので、引き継ぐ予定の農地で安定した収穫ができるように整備を行い、並行して新植を行って、効率よく収穫ができるようにしていきたいと思っています。新植は、今、圃場にない「極早生(ごくわせ)」を考えており、作業量の平準化狙いです。

営農の詳細については、現在、5カ年の事業計画書を作成しており、2月か3月に完成する予定です。

本田
段階的に農地を引き継ぐ予定ため、作業量も段々と増えてくのですが、まずは荒らさないようにきちんと管理する。そして新植をして「自分が一から携わった畑のみかん」を作りたいと考えています。

品種に関しては「極早生」が多く、「早生」と「普通温州」少なめ、晩柑系はほとんどありません。出荷先からは「早生」を求められていることもあり、「早生」と「普通温州」を増やしていきたいと考えています。

07 15ヶ月目の課題は?

百田
「みかんは表年と裏年があり、それを平準化するのが安定した経営のミソだ」と学びましたが、まだそういった「隔年結果をコントロールする技術」がないので、今後、学んでいかなければなりません。

あと、作業手順全般を自分に合った内容に最適化していく必要があります。

本田
確かに「隔年結果」は経験できていないですね。場所や木の状態によってもアプローチが変わってくるので、とても難しいです。

また、今年のように雨が少なかった年は、摘果しているのに玉太りが悪かったりするので、そいういった経験に基づいた技術も身につけていかなければいけません

百田
あと、事業開始時の金融機関からの借入額をどうするか、どのように初期費用を抑えるか、農作業に必要な軽トラック・運搬車・動力噴霧器などは借りれないか、選果する倉庫はどうするか など、資金面での課題は色々とあります。

それとみかんが忙しくない夏の時期に、何か他に作れるものはないか探しています。例えば、同じ果樹であるブルーベリーはどうかなど。

08 前職と農業はどこが違いますか?

百田
前職と比較すると、いつも納期に追われているということも無く、ストレスも少ないですね。お金の面を除けばですが(笑)
本田
一番良かったことは、家族と一緒にいる時間が増えたということ。以前は、息子と過ごせる時間がほとんどなく、朝は起きる前に出勤し、夜は帰ってからお風呂に入れて寝かしつけるだけの日も多かったです。収穫の忙しい時期でも、前職よりは家族と一緒にいることができます。

09 改めて、未来の研修生に向けて一言

百田
前回と同じような話になりますが、いろんな農家さんを見ることができ、それぞれの作業を体験することができるので、「私はこういった農業をしよう!」という、自分に合った農業スタイルを見つけることができます。これは、このトレーニングファームならではの良さです。

一軒の農家さんについて学ぶとなると、農家さんも人なので相性の合う合わないがある。その点、このトレーニングファームだとたくさんの人からいろんな角度で学べるので、良い研修プログラムだと思います。

本田
それぞれ特色のある農業団体を知ることができ、「自分の考え方」や「目指す農業」にあった団体を選ぶことができたのは、本当に良かったですね。

また、ひとりっきりで、一軒の農家さんに入るよりも、同じ研修生と意見を交わしながら、様々な農業団体や農家さんから学べるので、とても勉強になりました。

農業を着実に取り組んでいけば、生活には困らないと思います。

百田
私は、みかん農家は儲かると思っています。日本人の人口は減っていますが、生産量も落ちているので、需要は相対的に高まっています。また、海外に目を向ければ、日本の農作物の注目度も上がっているので、上手く海外展開できればチャンスも大きいです。国内に限っても、きちんと生産効率を高めて、無駄なく作れば、みかん農家は儲かります

是非、飛び込んでみてください。もし、事前に知りたいことがあれば、お答えしますので、ご連絡ください!